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古泉はキョンのことをなんて呼んでいるのかと気になって出来たss
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寝る前にベッドの上でまどろんでいる時間はチョココロネはどうやって食べるべきだろうかとか、明日の登校途中に谷口と会うかどうか並にどうでもいいことを考えがちだ。
だから俺が今考えていることは俺にとってどうでもいいことなのだ。そうに違いない。はい、証明終わり。
そんな俺が今ベッドの上で何を考えていたのかというと、我がSOS団にやけ顔副団長であり、ハルヒのイエスマンこと古泉一樹についてだ。
古泉は俺のことをあのマヌケなあだなで呼んだことがない。今や誰も呼んでくれない本名でも呼ばない。
一緒に話してる時は『あなた』としか呼ばんし、誰かと話している時も『彼』と言っているらしい。
まぁ、それであいつは心の中で俺のことをなんて呼んでいるのか気になったってわけだ。
いや、気になっているというのは違う。ただ、ふと思いついただけだ。
あのにやけ顔が俺のことをなんて呼んでいるのかなんて本当にどうでもいいことなのだ。
あんな奴のことよりも朝比奈さんのことを考えるべきだ。
あの麗しいお方が今何をしているか考えるだけで和むね。さらば古泉。フォーエバー。
しかし、どうでもいい疑問というのはそれを思い出すと変に気になっちまうもんでもある。
文芸部室で勝ちが決まっていてつまらんオセロの勝負を古泉としていると、暇でしょうがない。
もっと拮抗した勝負がしたいもんだね。
ここで長考しているのはおかしいだろ、お前。みたいなことを考えながら古泉を眺める。
それでまた、昨日の夜に思いついた疑問が沸いてきちまった。
「…そういえば古泉、お前は俺のことなんて呼んでるんだ?」
「は?」
なんだ、俺のこの質問はそんなに意外だったか?
こいつにしては笑顔を崩れさせて驚いた顔をしている。
あれ?ああそうか、考えてみればこれじゃあ俺が古泉にどう思われているか悩んでいる奴みたいじゃないか。
いやいや、その誤解はまずい。
別に深い意味があって聞いたわけじゃないんだ。
ただ、なんとなく思いついた疑問なんだ。
うわ、なんでお前嬉しそうなんだよ。
いつもの笑顔の3割り増しくらいか?
「あなたが僕のことを少しは考えてくださっていることがわかって、そのことが素直に嬉しいんですよ」
ああ、そうかい。別にお前のことを考えてたわけじゃねぇ。思いついただけだよ。
って、なんだよ。そのわかってますよ的な笑顔は。
「それでは、あなたの疑問に答えることにしましょう。そうですね、あなたのことを機関は重要人物の一人として見ていますからね。涼宮さん達と同じですよ」
同じっていうと…
まだこいつのことを信用のしの字程も信用していないくらいの時期にした会話を思い出す。
こいつはハルヒ達のことをフルネームの呼び捨てで呼んでいたんだよな。
それで朝比奈さんのことで俺がムカついて文句言ったんだったか。
そうか。こいつは俺をフルネームの呼び捨てで呼んでるのか。ほお。
まあ、ほんの少しではあるが気になっていた疑問が解消されたんだ。喜ばしいことだね。
さて、俺はどんな顔をしていたんだろうね?
鏡をいつでも見ている男なんてナルシスト以外の何者でもない。そして俺はナルシストではない。
だからどんな顔してるか知らん。古泉が何を焦っているのかも知らん。
「あ、いえ、その…。もちろん機関では、ですよ。
僕個人としては、今や『涼宮ハルヒ』なんて言いませんし、朝比奈さんや長門さんも同様です。
そんな他人行儀でぶしつけな呼び方はしていません。もちろんあなたも」
なんで早口なんだよ。どうだっていいんだって。お前の俺に対する呼び方なんて。本当にどうでもいい疑問だったんだから。
「あ、それで、僕が本当はあなたのことをなんと呼んでいるかと申しますと……」
なんでそこで止める。そんな勿体つけることじゃねーぞ。なんだそのいたずら思いついた子供みたいな笑顔は。
お前の笑顔は何種類あるんだよ。
「あの…もう少し考えていてくださいませんか?」
なんだそれは。考えんぞ。そんなどうでもいいこと。
「あなたが僕のことを考える時間を少しでも増やして欲しいのでね」
だから考えねーって。お前が今答えんのならそれでこの疑問は終わりだ。
「そうですか。それは残念です」
この話ももう終わりだ。返事の代わりに盤上に駒を置く。はい、これで角4つめだ。
「おやおや困りましたね。もう盤上が真っ白です。少しは手加減してくださいよ。ーーーーさん。」
…他人行儀じゃねーか。
「キョンさん」
…どっちだよ。
「キョン君☆」
それは気色悪い。
「キョン」
まあ、男のとも…いや、知り合いならそれが一番普通か。
「僕のことはいっちゃんとお呼びください♪」
断る。バカかお前は。
あーあ。なんなんだろうね。今の俺の状況は。
あれは罠だったのか?今日もベッドの上で古泉のことを考えちまってるんだからな。