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登り坂の途中、首元を隠す谷口が目に入る。
「おはよう」
いつもの通りの朝の挨拶。
僕は友達関係をやめるつもりなんてないからね?
そんなに脅えなくていいんだよ。
昼食時間。いつものように僕と谷口とキョンで弁当を食べる。
「なぁ、今日の谷口なんかおかしくないか?」
キョンの疑問。
うん。そうだね。首元を変に気にして挙動不審だね。それと僕を見る目に恐怖が混じっているね。
昨日のことを思い出しているんだろうね。
「キミの気持ち、キョンには言わないよ。その代わり…ね?」
「な、何言ってんだ?何が目的なんだ?」
壁に押し付けたままの格好だから逃げられないよね?もちろん逃がすつもりもないけれど。
首元に鬱血の跡を付ける。歯形付き。
う~ん。僕より肌が焼けているからちょっと付けにくかったな。
鮮やかに映えなくて残念だなぁ。折角の僕の…
「な、に、すっ!?」
ニコニコしながら僕は言う。
「所有印。目的はキミの体。今日のところはこれでおしまい。じゃあね」
いつもの態度で別れの挨拶を告げる。カバンを持って立ち去る。
後ろから谷口が崩れ落ちる音が聞こえた。
何か自分で上手くキョンに言い訳するかなぁ、と思って少し放っておく。
そんなに縋るような目で見ないでよ。もっと虐めたくなるから。
キョンは恋愛事には鈍いけれどそれ以外だと結構鋭い。
なんて今の僕にとって好都合な存在。
谷口のキョンへの恋愛感情はバレたら困るけど谷口の変な動作には気付いて欲しいからね。
少しはスリルがあった方がいいだろう?その方が面白いからね。
焦っているのを見ているのもいいね。
それにしても、どのくらい谷口が着崩しているのか僕はわかってるんだよ?
僕はキミを隣でいつも見ているんだから。
キミは僕のことをちゃんと見ているかどうか知らないけど。
だから、ちょうどギリギリで見えないところに付けたから挙動不審にしていなければ気付かれないのにな。
不器用だなぁ。そんなところも好ましいけど。
自分で大丈夫か確認しようとするから危険なのに。そのことに気付いてもいいのにね。
そんな馬鹿なところも可愛いけど、これ以上やるとキョンに本気で気付かれちゃうかな?
そうすると僕の計画も丸潰れだね。もう限界かな。
弁当用の醤油さしを持ちながら谷口に微笑む。
ビクつかれちゃった。変だなぁ、一昨日までの方の笑顔なのに。
だってキョンが目の前にいるんだから。
キョンは変な顔をしている。
しょうがないなぁ。
「谷口、朝食の時に醤油を首元に跳ねさせてワイシャツに付けちゃったんだって。
ちょうど替えのシャツも時間も無かったからそのまま来たんだけど、みんなに見られたら恥ずかしいって隠してるらしいよ。
だから変に首の辺り気にしてるんだよ」
「ふーん。なんだ、そんなことか」
おや、これだけで納得しちゃったのか。
「キョン!ちょっと来なさい!!」
「俺は今、弁当食って……って!うわ!!」
キョンは涼宮さんに連れて行かれてしまった。
谷口にキョンが「へぇ、ちょっと見せてみろよ」とか言った時のためにわざと親指に醤油付けておいたのにな。
見ようとしたら、前から付いていたものだと見せかけるために準備してたのに。
あ~あ、無駄になっちゃった。指に付いた醤油を舐める。うん、しょっぱい。
谷口に舐めさせれば良かったかなぁ。と思いつつ、教室じゃ無理だとすぐに思い直す。
横目で谷口を見ると呆然としながらもキョン達が出て行ったドアを名残惜しそうに見ている。
憂いを帯びている瞳もいいけれど、僕が隣にいるんだからこっち見てよ。
昨日見せてあげた方の笑顔をもう一度見せてあげるから。
「キョンには言わないって言ったでしょ?ちゃんとバレないようにするからね。安心して?フォローもするよ?」
『友達』やってあげるから。
うん。やっぱり横顔よりも正面から見たほうがいいね。
誰もこちらを見ていないのを確かめてから谷口のワイシャツをひっぱる。僕の所有印を確認した。